コトノハなごや
2017年度アーカイブ
アレに乗ったカップル
中村 航
「お前の観覧車のエピソードのおかげで、俺たちその気になったんだわ。ありがとな」
 結婚披露宴の最中に、新郎は言った。隣の新婦もにっこり微笑むのだが、僕にはなんのことかわからない。
 
 僕らは三人とも名古屋出身だが、出会ったのは東京でのことだ。大学生だった僕らは、他の地方出身者にはわからないエピソードを話し、大いに盛りあがった。
 まずは新郎が、寿がきやのみそ煮込うどんの話を、猛烈な勢いで語った。子供のころの土曜の昼食は、決まってみそ煮込だった。麺を茹でながらスープの素と卵を落とし、麺全体に卵を絡ませて食べる。あの大定番の袋麺が、東京ではなかなか手に入らない。東京信じれん、と彼は何度も繰り返した。
 新婦のほうは、東山動植物園のボートについて熱っぽく話した。園内の池のボートにカップルで乗ると必ず別れる、という迷信は名古屋中に広まっている。ある日、高校の女友達が、その迷信を破ろうと思いたった。付き合っていた彼氏に東山動植物園のボートに乗ろうと言ったら「俺と別れたいのか?」とケンカになり、それがきっかけで別れてしまった。まだ乗ってないのに!
 次に何か話すべきなのは僕だったが、二つの強力なエピソードを、先に言われてしまっていた。
「⋯⋯そういえば⋯⋯栄にできた観覧車、知らん?」
 観覧車はできて間もなく、地元の人間でもまだ知らないと思ったのだが、そうでもなかったようだ。二人は顔を見合わせ、知っとる、と小さくうなずいた。ボートの話をアレンジした出まかせを、僕は言った。
「アレに乗ったカップルは⋯⋯、結婚するらしいよ」
「⋯⋯へえー、そうなんや」

 幸せそうな新郎新婦を見やりながら、僕はゆっくりと思いだしていった。
 あのとき「へえー、そうなんや」と言った新郎は、妙にしらじらしい態度だった。
 新婦のほうは、少し顔を赤くしていたような気もする。
コトノハなごやとは
平日の通勤電車から見ているなごやの「モノ・コト」。休日のなごやの「人・風景」。
秘密にしておきたい通学途中のなごやの息抜きスポットなど…。
ことばと文化、メディア ー 互いにつながりあって「次の時代の望むことば・文字、なごや」を考える
【コトノハなごや】として、作品をお待ちします。
選考委員
中村 航Nakamura Kou
作家
1969年、岐阜県大垣市生。大垣市立北中学校、岐阜県立大垣北高等学校、芝浦工業大学工学部工業経営学科卒業。10代の頃はバンド活動をし歌詞や曲の創作活動が好きだった。卒業後、メーカーに就職し、エンジニアとして働く。27歳の時に友人に勧められて小説を書きはじめる。執筆活動に専念するため、1999年、29歳の時に退社。2002年、『リレキショ』(河出書房新社刊)で文藝賞受賞。『夏休み』(河出書房新社刊)が芥川賞候補に。『ぐるぐるまわるすべり台』(文藝春秋刊)で野間文芸新人賞受賞、第130回芥川賞候補。著作『100回泣くこと』や『デビクロくんの恋と魔法』は映画化される。アニメ『バンドリ!』原案、映画『トリガール!』原作者。
吉川 トリコYoshikawa Toriko
作家
1977年生まれ、名古屋市在住。愛知淑徳短期大学卒業。2004年、「ねむりひめ」で新潮社「女による女のためのR-18文学賞」の第3回大賞と読者賞を受賞。同年、短編集『しゃぼん』にて同社からデビュー。2007年には、『グッモーエビアン!』を原作とした東海テレビの単発ドラマ『なごや寿ロックンロール〜「グッモーエビアン!」より〜』が放送されたほか、『戦場のガールズライフ』がドラマ化され放送されている。また、2012年には『グッモーエビアン!』の映画化作品が全国にて公開。2013年より中日新聞のウェブサイトで名古屋を舞台とした短編小説「名古屋16話」を連載、出版。(2017年『ずっと名古屋』に改定出版)
武田 俊Takeda Shun
編集者・文筆家
1986年、名古屋市生まれ。法政大学文学部日本文学科在籍中に、世界と遊ぶ文芸誌『界遊』を創刊。編集者・ライターとして活動を始める。2011年、代表としてメディアプロダクション・KAI-YOU,LLC.を設立。http://kai-you.co.jp/ 文芸、映画、音楽、ゲームなどカルチャー領域を横断したプロジェクトを手がける。2014年同社退社以降、「TOweb」、「ROOMIE」、「lute」などWebメディアを中心に編集長を歴任。メディアを活用した地方自治体のまちづくり事業にも携わっている。中日ドラゴンズを愛する、右投右打。
写真提供・監修、フィールドワーク講師
秦 義之Hata Yoshiyuki
フォトグラファー
愛知県豊田市出身。『Number』などの雑誌の表紙、有名ミュージシャンのCDジャッケット、大手企業の広告の写真を手がける。2014年覚王山の元幼稚園を改装し、家族や子供を撮影する写真館『覚王山スタジオROSSO』をオープン。
FOCUS ROCK STUDIO & gallery ディレクター。
ワークショップ講師
広小路 尚祈Hirokouzi Naoki
作家
1972年、愛知県岡崎市生まれ。2007年「だだだな町、ぐぐぐなおれ」で第五十回群像新人文学賞小説部門優秀作。2010年「うちに帰ろう」、2012年「まちなか」で、芥川賞候補。現在中日新聞朝刊にて「炊事洗濯家事おやじ」を隔週金曜連載中。
流れ
作品募集プログラム
コトノハなごやでは、あなた自身が見つける「ことの端(は)」になっていくような、
次の時代の「言(こと)の葉(は)」作品を募集します。
「なごや」を切り取った写真から、日常での体験や人との交流、風景との出会い、ものへの思いなどを綴る
「なごやとわたしの物語」をご応募ください。お待ちしています!
募集期間
2018年6月26日(火)ー 9月18日(火)

※公式ウェブサイトは9月18日(火)24時にて募集を終了します。
※郵送の場合は必着。 
第2回 コトノハなごや作品募集要項
10枚の写真の中から1枚を選び、その写真から連想する小説・エッセイ・詩・短歌・俳句などの文芸作品を創作し、
ご応募ください。

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応募資格
名古屋市内に在住、在勤、在学の方とします。
募集作品
本文が200字以上800字以内で、日本語・自作未発表の作品とします。
1人3作品まで応募できます。ただし同じ写真で複数の応募はできません。

※応募時点で著作権などの全ての権利が応募者に帰属するものとします。
※合作・共作は不可とします。 
応募方法 AまたはBにてご応募ください。
A
コトノハなごや公式ウェブサイト内の応募フォームから応募 [推奨]
B
市販の400字詰め原稿用紙での応募
  • 1枚目に、下記①〜⑦を記入してください。
    ①氏名(ふりがな)とペンネーム ②住所 ③在勤・在学の種別 ④年齢 ⑤携帯電話番号 ⑥選んだ写真の番号 ⑦タイトル
  • 欄外にタイトルを記入し、本文を記入してください。
  • 事務局へ郵送してください。
    郵送先 / 〒460-0008 名古屋市中区栄3-18-1 ナディアパーク8階 公益財団法人名古屋市文化振興事業団
・コトノハなごや 金賞 1作品 賞状と副賞10万円
・コトノハなごや 銀賞 2作品 賞状と副賞各3万円
・コトノハなごや 佳作 若 干  賞状
結果発表
入選20作品 | 2018年11月上旬より公式ウェブサイト上で発表します。
入選作品| 2018年12月1日(土)の「コトノハなごやサロン」(授賞式・公開講評トーク)で発表します。

※入選20作品の作者の皆様は「コトノハなごやサロン」にご出席いただきますようお願いいたします。
※「コトノハなごやサロン」では、選考委員が入選作品の公開講評トークを行います。
参加体験プログラム
何気ない日常の彩りも目線を少し変えれば、変わるもの。
その角度や時間の切り取り方を、写真とことばで表現しているプロフェッショナルから、ヒントをもらえる参加体験プログラムです。また、コトノハなごやサロンは、作品募集プログラムで選ばれた入選20作品の公開講評トークと、入賞作品発表、授賞式を行います。ご期待ください!
フィールドワーク
日時
2018年7月21日(土)13:30−16:30

会  場
四間道・円頓寺一帯、伊藤家住宅
講  師
秦 義之
内  容
四間道・円頓寺のまちを感じながらスマホのカメラ機能やデジカメを使って「日常を印象的に切り取る」フォトウォークです。最後に皆さんそれぞれの「今日一番の写真」を全員で見ながら講師に講評してもらいます。
持ち物
撮影機材(スマホ、デジカメ)、筆記用具
参加費
600円(保険料、資料代を含む)
定  員
20名
申  込
こちらから
申込開始
6月26日(火)から
ワークショップ
日時
2018年8月25日(土)13:00−16:00
会  場
文化のみち二葉館(見学) 文化のみち橦木館(講座)
講  師
広小路尚祈
内  容
広小路氏著書を元に「取材」の効果や「推敲」の仕方をレクチャー。その後講師による個別作品相談を実施。文章初心者の方から書き慣れた方まで、一緒に作品の応募を目指します。
持ち物
入力機材(スマホ、タブレット等。ない方は原稿用紙等)、筆記用具
参加費
600円(二葉館・橦木館 共通券、保険料、資料代を含む)
定  員
20名
申  込
こちらから
申込開始
6月26日(火)から
コトノハなごやサロン
日時
2018年12月1日(土)14:00−16:00
会  場
7th cafe(中区栄3-18-1 ナディアパーク7階)
スピーカー
中村 航、吉川トリコ、武田 俊
内  容
「コトノハなごや」の入選20作品から、入賞作品を発表し、授賞式を行いますので、作者の皆様はご出席ください。
また、入選作品についての公開講評トークも開催しますので、お楽しみに!
参加費
無料 ※応募されていない方の参加も大歓迎!
コトノハなごや企画展
日時
2018年7月3日(火)ー 7月24日(火)
会  場
文化のみち二葉館
内  容
第1回「コトノハなごや」の入賞5作品と、吉川トリコ氏が執筆した基調文を展示します。
入場料
二葉館への入館料が必要。
大人200円、名古屋市敬老手帳100円、中学生以下無料
その他
市内施設や協力書店でも展示予定。